

オスの頭部には長い頭角が一本伸び、さらに左右の前胸部から太く立派な角(胸角)が左右対称に突き出します。
大型個体ではこの左右の胸角が内側に湾曲するように大きく張り出し、“ケンタウルス(三つ角)”の名に恥じない迫力ある角姿となります。性格は比較的温順で動きも緩やかですが、力は強いため飼育ケース内での闘争には注意が必要です。
飼育自体はそれほど難しくなく、市販の発酵マットや昆虫ゼリーで通常飼育が可能とされています。一方、産卵・ブリードにはやや癖があり、休眠期間が長いことも相まって繁殖に時間を要します。
卵から成虫になるまで約1年~1年半を要し、成虫は羽化後約6~10か月間もの時間を土中で休眠する習性があります。
成熟した後に活動・後食を開始し、同時に繁殖期へと入ります。

ケンタウルスミツノカブトは「超希少種」の名に違わず、国内での流通量がごく僅かな幻のカブトムシです。
本種はアルゼンチン北東部(ミシオネス周辺)に生息しますが、現在は国際的な輸出入規制の対象となっており、日本への野外個体の新規輸入は禁じられています。
実際、輸入規制が敷かれる直前の年にたった1ペアだけが日本に持ち込まれたとされており、その子孫が細々とブリードされて国内で流通している状況です。
日本国内に存在する個体群はすべて同じペア由来の兄弟とも言われ、極めて限られた血統で維持されているのが実情です。
これほどの希少種ゆえ、入手できる機会も限られます。一般的なペットショップで見かけることはまずなく、信頼できる昆虫専門店やブリーダー直販、昆虫イベント、ネットオークションなどが主な入手ルートです。
国内でも流通個体数が極端に少ないため、販売情報が出ればマニアから注目を集めます。

ブリーダーの間では、「ロングホーン」と呼ばれる個体(通常より著しく長い角を持つオス個体)はとても人気があり、ブリーダーたちがこぞってロングホーンを目指して飼育しています。
ケンタウルスミツノカブトは本来ポテンシャルの高い種で、大型長角化が可能と考えられますが、現在までの国内累代では極端に長い角を持つオス(ロングホーン個体)は流通量がとても少ないのが現状です。
そのため、ロングホーンの大型個体はその希少性から高額で取引されることがほとんどです。

希少性の高さから、ケンタウルスミツノカブトの価格は他のカブトムシと比べても非常に高額な部類に入ります。
近年の国内オークション相場では、ショートホーン(角が短く、小型から中型サイズ)の成虫ペア一組あたり平均で2万円前後の落札価格となっており、状態やサイズによって幅があります。
過去のヤフオク落札データでは最低5,000円、最高98,900円という極端なレンジを記録しており、極めて大きな個体や希少な組み合わせには数十万円近い値がつくケースもあります。
店頭販売価格も高額で、専門店では飼育下大型個体の即ブリード可能ペアが5万円~10数万円で販売されています。
一般的な平均サイズ(オス60mm台・メス50mm台)のペアでも数万円は下らず、販売情報自体が滅多に出ないため「見かけたら即買い」の覚悟が必要でしょう。
なお、幼虫の相場も高く、3令幼虫ペアで1万5千円~2万円程度(例:3令ペア16,280円)との情報もあります。
希少種ゆえに価格変動も大きいですが、「ミツノカブト最高峰」とも称される本種は、その貴重さと迫力から高価でも取引される傾向にあります。今後も累代が安定し流通量が僅かでも増えれば多少値下がりする可能性はありますが、依然として入手難易度・価格ともに最高ランクのカブトムシであることに変わりはありません。

具体的にはプロショップ製の完熟マットや黒土マットなど、栄養分が十分に分解され熟成されたマットが適しています。発酵が浅いマットよりも、完熟系マットを選ぶことがポイントです。
マットの水分量はやや多めで、手で握って固まりができるが水は滴らない程度のしっとり加減が理想です。乾燥に弱い種なので、産卵中マットが乾かないよう注意しましょう。必要に応じてマットにミズゴケを適量混ぜ込むと腐葉土的な効果と保湿効果が得られ、転倒防止にもなります。
メスの未成熟・交尾不完全: メスが完全に熟成していないと産卵スイッチが入りません。交尾自体が成立していない(無精卵)ケースも疑うべきです。成熟した別のオスと再ペアリングさせる、時間をおいて再度交配を試みるといった対処が考えられます。
マットの状態不良:マットが発酵不足だったり、逆に栄養過多で再発酵臭がするような状態だとメスが産みにくいことがあります。アンモニア臭がする場合は新品の完熟マットと交換してください。乾燥しすぎも論外なので、適度な加湿を維持します。
温度不適:極端に低温(20℃を大きく下回る)や高温(30℃近く)ではメスの産卵意欲が減退します。適温範囲(おおむね22~27℃)に保つことで産卵しやすくなります。
ケースサイズ不足:産卵ケースが小さすぎると、メスが動き回るうちにせっかく産んだ卵を踏み潰してしまう事故が増えます。小ケースで産卵させる場合は特に早めの採卵(産卵後10日~2週間程度で回収)を心がけ、卵を保護しましょう。可能であれば最初から十分大きなケースを使うのが無難です。
これらを見直しつつ、根気よくセットを組み直せば産卵自体は比較的容易な種類です。十分成熟したペアと良質なマットさえ揃えば、多産も期待できるでしょう。